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■第3回 国際ユニヴァーサルデザイン会議2010inはままつ 参加報告 |
菅野 真由美 |
前回の京都開催から4年、その年にうぶ声を上げたNPO法人ユニバーサルデザイン・結ですが、今回の国際ユニヴァーサルデザイン会議in浜松で、3つも研究発表ができることになろうとは、夢にも思いませんでした。そして、初めて訪れたUDの先進地といわれる浜松市、駅前には国際会議にも対応できるコンベンション施設のある国際都市でした。
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◆ 分科会「UD教育・普及啓発」の内容 |
会議も4日目となる11月2日、私が参加した「UD教育・普及啓発」の分科会は、次の4つの研究発表が行われました。
○北欧型UD教育の改革について Evastina Bjorkさん(スウェーデン王国)
○利用者調査から『わかりやすい説明』を実証し、映像教材として活用する
山田千夏さん(有限会社アリスト・日本)
○小学校でのUD教育プログラム開発(NPO法人ユニバーサルデザイン・結菅野真由美)
○サンフランシスコの小学校でのUD教育・日立との共同研究
(Ricardo Gomesさん・アメリカ合衆国) |
私の発表内容は、今県内の小学校で行っている「UDスゴロクワークショップ」を題材に、今までとは違った手法で小学校のUD教育にアプローチしていこうと、試行錯誤している、というものです。今月中旬までに、予定の7つの小学校訪問を終えるこの事業ですが、毎回同じ運営ができるわけもなく、反省と挑戦を繰り返しながら進めています。それでも、「実際は、ゲームのようにバリアはなくならないので、UDは大切」という言葉を子どもの口から聞くたびに、「思いが伝わった」という安堵感で満たされます。 |
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分科会の会場からは、「障がいのある子どもがいるクラスの場合は、どのような配慮をしているのですか?」などの質問を受けたのですが、今のところそのようなクラスでの運営は経験がありません。反対に、小学校でもインクルーシブ教育が進めば、私たちが声高に唱えなくても自然と、おもいやりや助け合いの本当の意味がわかるようになるのではないかと思うのです。このワークショップの目標は、そこにあるのでは・・・と再認識した発表でした。
また、日本の山田さんは看護師への教育教材のわかりやすさという、とても高度な研究テーマでした。スウェーデンの方は北欧型の教育システムを変えつつ、ヨーロッパ全土にも普及を試みようとしているとの話しでした。そして、分科会の司会も担当されたアメリカのゴメスさんは、サンフランシスコ州立大学の教授で、州内の小学生のために日本のメーカー日立と共同し、テレビのリモコンの使いやすさを題材にワークショップを開いているという研究報告でした。
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◆ 「米国のUD」バレリー・フレッチャーさんの特別講演を聴いて |
企業や団体のUDが展示されているホールの見学から戻る途中、佐藤理事と何気に入ったカフェで、ボストンの人間中心デザイン研究所バレリー・フレッチャーさんと、ばったりお会いしました。
京都会議以来4年ぶりですが、あの時はまだ、ストンへの研修から戻って1年、結を立ち上げたばかりで、ただただ再会を喜ぶばかりでしたが、今はNPOとしてUD推進に貢献しようと活動をしていること、コミュニケーションサポートツールなどの開発や、今回の会議でいくつか研究発表をしていることなど、気がつけばそれらをまくし立てるように話していました。しかし、いつも私たちのことを気に掛けていてくださっているバレリーさんですので、とても喜んでくださり、渡した資料も「翻訳してもらって、読ませてもらいますね」とおっしゃって下さいました。 |
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翌日の特別講演もすばらしいものでした。「本当は、私のプレゼンテーションなど必要はない。ただ、多くの皆さんとひざを交えて話し合いをすることに、この会議の意義がある。」という言葉には、UDへの熱い思いと温かな人柄が表れています。今年、日本でのUD認知率は60%ほどになったという報告があるということです。しかし、アメリカでは未だに6%から8%だそうです。確かに、日本に住むアメリカ人に「ユニバーサルデザイン・・・」と話したら、「それはなに?」と聞き返されたことがありました。
それでも、はるかに日本よりは整備が進んでいるということです。数字云々ではなく、すでにあたりまえのことになっているということなのかもしれません。これからは、超高齢化時代に入った日本が、世界のUDを牽引していく責任がある、という言葉には身が引き締まります。
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◆ ユーディット・関根千佳さんとの縁 |
やっぱり、今回も関根さんにお会いできました!ちょうど参加していた情報の分科会に、入っていらっしゃり、精力的に質問をされていました。また、われわれの報告があった分科会では、アメリカの大学の方に英語で質問、さすがです。
前日の夜にはずうずうしくも、夫婦水入らずの予定だった夕飯に割り入ってしまいました。すてきなご主人ともお話でき、UD先進県の取り組みの話で盛り上がりました。思えば、関根さんとお会いしなかったら、こんなに自分の世界が広がらなかった・・・。県のUD推進会議で初めてお会いした時の「なんてすごい人なんだろう」という衝撃。そして、関根さんに「ぜひ、ボストンに行ってらっしゃい」と背中を押してもらわなかったら、今日ここにはいなかっただろう、と思うと、不思議な縁を感じずにはいられません。 |
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◆ 終わりに・・・ |
今回、この国際会議に合わせ、論文を書くことが私にとって新たな挑戦となりました。忙しさにかまけて、事業が“やりっぱなし”になりがちです。しかし、これからはやり終えたことの検証と分析は必須であると思うようになってきました。
そして、どんな形であれアウトプットすることの大切さも痛感した、国際会議の参加となりました。 |
さらに、論文を書く途中であらためて感じたこと、それは、事業を行うにしても、ユニバーサルデザイン・結というNPOを運営するにしても、多くの皆さんのご協力とご支援を受けて成り立っているのだということです。代表をはじめ理事・監事や会員の皆さん、製品のデザインを支援してくださっている方々、そして協働していただいている福島県の各部局の皆さん、心から・・・ありがとうございます。これからも、よろしくお願いします。
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